推しの投げた球受け止めたいの件/君はファンサを見たか

自己承認の低い人間は往々にして謙遜が身に染み付いているものですが、しかし謙遜も過ぎれば卑屈となり、卑屈になってしまえばもはやそれは美徳でも何でもない、ただのはた迷惑な自意識過剰となるわけです。

自己の承認が低い結果、自意識は過剰になるとはこれいかに。上がってんの下がってんのって話ですけど、何でそんな事言い出したかと言えば、今日はファンサすなわちファンサービスの話をしたいから。

 

ファンサービス、それはつまり指差しだとか微笑みかけるだとか、主にライブ中に投げかけられる推しからオタクへの「お前の事見てんぜ」「ありがとな」的行為ですけど、私はこれあんまり実感したことなかったんですよね。わたくしの推しこと田中俊介くん以下しゅんくんは結構ファンサする方の人みたいなんですが、たまーにふと目が合った時に猫が微笑む*1みたいに目を細めて「おっ、おるな」っていう出席確認みたいな顔をされることがあるくらいで、そこまでがっつり指差しだの何だのってことはほぼ受けたことがなかった。

いや正確に言うと、ない、と思ってた。そんなはずないと思い込もうとしてた。

 

突然ですけど、私はまあまあ背が高い方で、女子ばかりのスタンディングだと後ろから聞こえよがしに恨み言を言われることもままありまして。*2そんなこともあって、まあ見えれば大丈夫です…って基本中盤より後ろあたりにひっそり、みたいな場所取りばっかりしていた。整番運もよくなかったし。そんで、背が高い分、これ以上はみ出すまいぞーってペンライトも絶対顔の前より上には上げないような、つつましやかなオタク活動をしてたんですよ。

 

それが最近、何の因果か立て続けに整番の神に微笑まれてしまって、連続で最前を頂いてしまった。

結論から言ってしまえば、まあありますね!ファンサって!!実在した!!取材班がアマゾンまで飛ばなくてもその実在が証明された!!都市伝説じゃなかった!!さすがに最前で推しまで2m前後、間に何も遮るものがない状態で「この目線は勘違いです」とは言えなかった。ちなみにしゅんくんも相当目がいいらしいですけど私も視力1.5以上あります。これは言い訳できない。あの状況では、あのキメ顔も笑顔も全部私宛だったと断言せざるを得ない。

何だよお前の自慢話かよ、と思われそうですけど、まあもうちょっと話を聞いてくれ。

 

私には、かれこれ11年ちょっと追っかけてるアメリカのアーティストがいまして。彼がバンドをやっていた頃は、来日するたび全会場追っかけて、国外にも何度か遠征して、国内だったら基本的に最前どセンみたいなまあまあダイハードなビッグファンだったんですよ。*3自分で言うのもあれですけど、今振り返ってみても、日本人で私より熱意を持って推して通いつめてた人間いなかったと思う。*4

そんだけ通ってると、当たり前だけどこっちから見えてるってことは向こうからも姿が見えてるので認知されるんですよね。そんで、小さいライブハウス規模で招聘されるような海外バンドって、接触できるどころではなく普通〜にそのへんウロウロしてるしむしろ向こうからばんばん話しかけてくるし、あとはファンの側の語学力と気合次第でどうとでも交流し放題なので、だんだん親交も交わすようになってくるわけです。

私の推しは結構中二病というか気取ったところのある男なので、他のバンドみたいに特定のファンに露骨に感謝を示したり特別扱いしたり*5っていうことはしなかったけど、事前に私の好きな曲を聞き出しておいてセットリストに組み込んだりいつも同じ曲の同じポイントで手を握ってきたり他にも色々、いま振り返ってみてもし私が他人だったら「それは完全にファンサだしなんならオキニだよ!!」って言ってただろうなってくらい、こっちの好意に対して最大限の感謝と好意を返してくれてたと思う。

でも、それなのに、私はずーーーーーっと、「いやいやいや絶対好意とかじゃないから!ただの偶然と気まぐれだから!!」って言い続けてた。あんなに心を尽くしてくれてたのに、「自分みたいなつまらんもんが、憧れの相手からそんな大層なもの受けるに値するわけがない!」っていうしょうもない卑屈さのせいで。彼がせっかく向けてくれてたありがとうや喜んでほしいって気持ちを、まっすぐ受け取らずにひねくれて全部はねつけてしまってた。これは一生後悔し続けるし、取り返しがつかないひどい行いだったなあと思います。

 

友達でも、たまにいるじゃないですか。こっちがどれだけ励ましても褒めても「いやいやいやそんな事ない」「自分はダメだ」「買いかぶってる」みたいに、自己否定が過ぎててこっちの肯定的な気持ちいっこも受け取ってくれない子。あれめちゃくちゃめげるしへこむし疲れるし、「私の言葉はそんなに信じられんのか」「私の好意はそんなに嬉しくないものなのか」ってすごい悲しくなる。徒労感はんぱない。

それって、きっとボイメンくんたちの側でも同じだと思うんですよねえ。だって同じ人間だもの。

 

水野勝なんかはライブ後の特典会で「お前せっかく俺が指差したのに何無視してんだ!!勘違いじゃねえよお前だよお前!!」って怒ってくださったりするそうですけど(本当に恐ろしいなあの人は)(好きだ…)、せっかくファンサしても空振りばっかじゃやんなっちゃうだろうなーって思うんですよね。ただでさえ普段からワーキャー言ってもらえないってよく言ってるし。*6最近のラジオでも「みんなを楽しませたい一心でやったことが伝わってないとションボリする」ていう旨の事言ってましたけど*7、そりゃそうだよねえ。そりゃへこむよー。

 

なので、ファンサも、ちょっと調子こきなくらいの勢いで受け取っちゃった方がお互いのためだと思うんですよね!思うんですよねってお前できとらんやんって話ですけど。いや私も今後は気のせいレベル勘違いレベルのもガンガン己へのファンサとしてカウントしていく姿勢でいこうと思います。今更だけど、後ろの方で見てた頃に目が合った気がしてたやつも、遅ればせながらあれは目が合ってたとジャッジさせてもらう。どちらさまに向けてなのかわからん遠慮も謙遜も、ましてや卑下も自分がすり減るだけで誰も得しないしな!よしんば嫉妬されても「いいな〜!」には「いいでしょ〜?」って言っとけばいいと思うんすよ。どんどこ勝手に受信して「隅々までファンサのできる推し天才〜!!」って褒めまくっていきたい。*8勘違いだろうがなんだろうが、喜ばれてりゃ向こうにとってもまあ悪い事ではないだろうし、こちらとしても推しによって幸せがもたらされてんなら、それで大正解の結果オーライだぜ!と思うんですよね。

 

まー目線も指差しもなかろうが、突き詰めていけばもう推しが今ここに生きて存在してるだけで最高のファンサなので、いまこの瞬間にも我々はファンサを受け続けていると言っても過言ではないんですけどね。過言なんですけどね。でも推しがイケメン版蠱毒の壺みたいな苦境を生き延びて、今もずっとボイメンでい続けてくれるっていうのに勝るファンサはないな…というのはかなりマジで思っていることであります。先に述べたバンドの件もあるし…。推させてもらえてるって奇跡なんだよなあ。

 

ぐだぐだになってきたところで、先にも触れた最近受けたファンサの記録を貼って今回の話は終わりたいと思います。ファンサっていうかこれは…いっこめのはファンサだと思うけど(そして勝手にめちゃくちゃ食らっている)ふたつめのは…なんだ??多分ファンサ、ファンサですきっと。楽しませようとしてくれた気持ち、しかと受け取ったぞ。若干オーバーキルだったけど。

*1:猫飼ってる人にしかわかりにくい表現。猫は機嫌がいいと飼い主に向かってゆっくり両目を細める両目ウインクをします。

*2:ガツガツ行く系のライブハウスだったらおうおう羨ましいかよ知った事かってむしろぐいぐい前に行くんですけど、ボイメン現場はそういうノリでもないし。

*3:過去形で書くのが心が痛い。まだ音楽活動はしてるんですけどね。ライブしてくれ。

*4:これはとても悲しいこと。もっとたくさんの人たちから愛されるべきバンドだったから。もう解散してしまったバンドだけど、もっと多くの人たちに見つけてもらえていれば違う運命があったのにと今でも思う。

*5:MCで特定のファンに感謝の言葉を述べたりステージに上げたりっていうのはそんなに珍しくない。

*6:ボイメンオタクのイベント会場なんかでメンバーがそのへん歩いてても基本的に無視する姿勢めちゃくちゃびっくりしたし未だに何故…って思う…大騒ぎしすぎるのもそりゃよくないけどちょっとかわいそう…。

*7:炎・天下奪取PVについてリスナーから「ボイメンにあんなことさせないで」的なおたよりが届いて、えっそんな…と動揺していた面々。

*8:それに、常に「今日も◯◯くんと見つめ合っちゃった♡」みたいな人最強だなって卑屈や嫌味でなくマジで思うし…現場を最大限楽しんでるじゃん…。その意気やよし。